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2020.04.02「星合の空」赤根和樹監督 Anime News Networkインタビュー日本語訳(part1)

「星合の空」赤根監督が北米メディアのAnime News Networkさんのインタビューを受けました。

https://www.animenewsnetwork.com/interview/2020-03-04/stars-align-director-kazuki-akane/.156859

 

本ページではインタビューを元に編集して記事化した英文を、日本語に翻訳しなおしたものを公開いたします。

 

 

インタビュー:『星合の空』赤根和樹監督( Part 1

 

 

『星合の空』は、赤根和樹氏が、脚本、監督を担当したオリジナル・アニメテレビシリーズです。赤根氏は、『天空のエスカフローネ』『鉄腕バーディー:DECODE』の監督としても知られています。 ストーリーは、ソフトテニス部員である少年たちの、コート内外での試練と困難を追ったものです。 アニメが家族虐待のような問題を繊細に描いたこともあり、世界中でファンの注目を集めました。次回が気になるエンディングで第12話を終えた後、アニメニュースネットワークは、本作のアニメーション制作を担当したエイトビットにお邪魔して、赤根監督に作品の独特な魅力について語って頂きました。本インタビューの前半部分では、アニメにおけるリアリズムから家庭虐待、LGBTQ+問題に至るまで、広範囲にわたる作品のテーマについて語られています。

 

──『星合の空』の アイデアは、 最初どのようにして思いつきましたか?

 

赤根和樹:『星合の空』以前に、『コードギアス亡国のアキト』をやっていました。『コードギアス』は、原作がある作品で、準備期間も含め、完成まで5年かかりました。そっちをやりながら、自分が求めているドラマを創りたいという欲求が積みあがっていきました。

 

最近のアニメを見ていて、メッセージ性のある作品を作る事ができないか、もっとあっても良いのではないか、と思うことがあります。個人的には、大人として、若い人たちの痛みが理解不可能ではなく一緒に経験していける、ということを示すために、彼らの抱える問題についてストーリーを描きたかったという想いがあります。 世代間ギャップは越えられると思います。若い人たちは、 彼らが抱える問題は彼ら自身のせいだと言われることもあるかと思います。ですが、それは間違いです。勝手な基準に照らして、若者が悪い、と言われるのは、フェアではありません。

 

よりポジティブなメッセージをもったドラマを作りたいと思っていました。 アニメーションは、それをするのにぴったりの手段だと思いました。ご存知の通り、アニメは、一般的に10代、20代の 若者が見ます。彼らが大人になって、若者や自分の子供と接するようになった時、大人の意見や考えを押し付けるようになってはいけない、と思っています。近年、たくさんのアニメが作られていますが、それは若者が何を欲しているかを特定し、把握しているからです。リストにある項目をチェックするだけという感じで、使い捨てのような感じです。若い人たちは重いドラマは見たがらないと、言われたりしますが、疑念を感じずにいられません。若者は、本当に、毎日、楽しく気軽な気晴らしばかりを見たいのでしょうか?そうではないことを証明したかった。だからこのアニメを作ることにしました。

 

──このシリーズでは、家族問題や虐待のような難しい題材にも触れています。このようなアニメを作る上で、クリエイターにとって、どんな難しさがありましたか?「問題になること、物議をかもすようなものは書かないで」という空気はあったりしますか?

 

テレビ向けの作品だとそのようになりますね。日本では、通常、地上波で放送される作品が最も露出が多いです。テレビには、守らないといけなかったり、タブーとされることなどがあります。でも、言葉の中に、『差別的な言葉やニュアンス』『差別的な時に使う言葉』を入れると嫌がりますが、 アクションや現象で見せると、驚くほど寛容だったりします。

 

テレビにおいて、両親が子供を殴っているのを見せることは、アメリカでは禁じられていますよね?目にすることはめったにないと思います。それだけ大人が子供を殴ることが、どれだけ不快なことかをアニメーションの演出として見せました。ただ、言葉として入れないようにしました。

 

──はい、第1話のエンディングは衝撃でした。

 

そうなのです。でも、人が斬られたり、銃で撃たれるアニメは山ほどありますよね。じゃあ、どうして、誰かが殴られたり、打ちのめされたりするのを見るだけで不快なのでしょうか。 私はそれをフレームに収めて、演技で、その不快感を伝えるようにします。子供からすると、恐ろしいことです。大人にも、子供の視点を通して見られるようにしたいと思っていました。

 

──この作品は、大人に向けたものでもある?

 

大人にも見てもらいたいし、 若者にも見てもらいたいです。

 

日本でアニメブームが始まった時、私は10代でした 。それ以前、アニメは幼稚園の子供が 見るものくらいにしか思われていませんでした。私が10代の頃、『宇宙戦艦ヤマト』や『 機動戦士ガンダム』のような作品が大きくなり、アニメが10代のものにもなりました。それから時が経って、今では50代、60代 の人でもアニメを見る人がいます。私は、10代だけでなく、それらの人たちにも作品を見てもらいたい。そういう意味では、視聴者ターゲットは、広くなりますね。

 

──テニスを題材に選んだ理由は?

 

具体的に言うと、「ソフトテニス」ですね。世界的にみると競技人口が少ないスポーツです。日本人がもっと小さくて、体力も弱かった時代に発展した ものです。だから、試合時間も短く、そこまでスタミナも要求されない。子供でもプレーできます。

 

『星合の空』が、バスケットボール、バレーボール、野球のように、メジャースポーツの話だったら、いずれプロになりたいという熱意を抱くかもしれません。高校だと、才能ある子供たちは、親からサポートを得て、さらに続けるでしょう。しかし、ソフトテニスは、作品の企画当時は、プロのあるスポーツではありませんでした。子供たちが、純粋に楽しむスポーツです。 その辺りにドラマを作りたいと思っていました。

 

バスケのようなスポーツにフォーカスをあてるアニメはたくさんあります。しかし、個人的には、それが打算的なものに見えてしまうのです。お金になるから、そのスポーツを選んでいるのではないの?と。でも、ソフトテニスではそれは不可能でした。プロがなかったからです。好きだからということだけでプレーするからです。そんな純粋な理由で、スポーツを選ぶというのは、素敵なことだと思いました。

 

13歳、14歳ぐらいの中学生の子供は、最も打算なく、人生を生きている、と私は思います。 子供は、大人みたいに、どうやってお金を稼ぐかということについては考えません。

 

──ソフトテニスは、日本生まれですが、ニュアンスが、海外の視聴者にも伝わらないのでは?と考えることはありましたか?

 

そこは残念ですね。アニメの中で、もっと説明すべきでしたね。情報をどうか広めてくださいね。

 

──『 星合の空』というタイトルが 興味深いと思いました。七夕を意識したものですか?

(インタビュア注: 織姫と彦星 という神様は、恋人同士。一年に一度だけ天の川を跨いで会うことができる祝うお祭りです)

 

そうです。

 

──やはりそうなのですね。英語のタイトルでは、一生に一度の機会というニュアンスが含まれていますが、特に七夕の星を跨いでの恋人同士という意味ではありません。 日本の文化を知らなければ、 ピンとこないことの一つかもしれませんね。

 

そうですか、それは知りませんでした。英語への翻訳は難しそうですね。

 

──ご自分でもソフトテニスをしますか?

 

中学から高校1年まで、ソフトテニスを していました。中学の時に経験したことでストーリーの中に入れたものもあります。 その意味では、現実に即した話だと言えますね。

 

──スポーツアニメでは、スポーツをとても格好良く見せているものが多いですが、『星合の空』は、とてもリアルです。スポーツの細部にこだわってスポーツをアニメ化するのは、とても難しそうですが、リアリズムを狙ったのはどういう理由ですか?

 

技術的なレベルでは、スタイルを意識して格好良いタッチで描くアニメーターは多いです。個人的には、スポーツを誇張した形で描くことの方が簡単だと思います。 細かいところをごまかすことができるからです。日本のアニメ業界は、アニメーターの技術がとても高いので、私自身リアリズムでやってみたいと思いました。

 

──実験のような感じですか?

 

そうですね。実験と言う要素もあったかもしれません。ビジュアル的に新しいことにトライしたかったというのもあります。世界のどこにいってもそうだと思うのですが、大げさなアクションでも、スポーツ、特に子供が遊んでいる動きなどは、格好良くしすぎたり、過剰にすると、人物の感情が伝わりにくくなるかもしれません。

 

この作品においては、スポーツと登場人物の問題や感情の混乱を細かく描きたいと思っていました。その両方をリアルに描きたかった。

 

──正しいテニスのフォームを理解する上で、アニメーターはどんなことをしましたか?

 

エイトビットには、テニス経験のあるスタッフが何人かいます。すごく上手い人もいます。その動きを撮って、アニメーターたちが参考にしました。

 

──試合のシーンですが、ほとんど2Dアニメーションで描かれています。3D要素もありますが、部分的です。それは、狙ってのことですか?

 

日本のアニメーション技術は本当に高いです。 コンピューターを使って、動いている3 Dカメラのようなエフェクトを出すこともできますが、私は、2 D を強調したいと思っていました。 3 D要素は、アニメーションを補うためにあります。CGには、CGの役割があります。 比較的経験の少ない アニメーターでも、CGを使うことによって、空間の感覚を醸すことができるからです。でも、私の理想は、アニメーターが、手作業によって、空間の感覚を伝えることです。

 

──だから、CGの使われているところが、 限定的なのですね?

 

そうですね。手描きのアニメーションには、コンピューターでは出せない魅力もあると思います。リアリズム的な感覚を伝えるために、キャラクターの動きにフォーカスしたいと思っていました。それにより、キャラクターの視点により近づくことができます。キャラクターに触れられる感覚を味わえます。非現実的で漫画のような構図に頼りすぎすると、それは演劇作品またはステージを見ているような感じになるかもしれません。観客が、キャラクターと自分を重ねることを難しく感じるかもしれません。CG重視のアプローチは、強いインパクトを残すことができますが、キャラクターが人間であることを見失うことになるかもしれません。あまりCG を使いすぎると、そういう事態が起こってしまうのではないかと思っています。

 

──一方で、リアリズムを求めるアニメを作ると、どうして実写でやらなかったんだという質問も来ると思います。『星合の空』 で、そのような質問をうけたことはありますか?

 

『星合の空』のアニメーションは、実写とは決定的に異なる表現です。私は、アニメーションとは省略と誇張である、と教えられました。アニメーションで現実をそのままコピーしてしまうと、上辺だけになってしまいます。省略し、誇張することで、 より本質に近づくことができます。現実をそのまま映しても、描きたい本質には近づけません。対象となる「それ」を誇張し省略することで、描くことが出来る。それが、アニメーションのマジックであると思います。 最近では 、それを忘れているクリエイターもいると感じています。

 

──ストーリーの話に戻ります。第8話には、LGBTQ+Xジェンダーについて論じるシーンがありました。いつ頃から、興味を持ちましたか?なぜアニメに入れようと思いましたか?

 

5年ぐらい前でしょうか。ホモセクシャルは、日本のマンガや小説、特に女性向けのボーイズラブなどでよく出てくるテーマです。同性愛のジャンルがあることは、知っていましたが、一般的なエンターテイメントなどでよくある描き方に、疑いを抱いていました。実写のテレビでは、男性同士のラブはコメディとして扱われます。アメリカやヨーロッパなど海外でも、同じような感じだと思います。それに違和感を覚えざるを得ませんでした。いつも、おかしいのではないかと思っていました。

 

『星合の空』では、 少年たちが、女の子のような服装をし、ライバルチームの情報を集めるというプロットがあるのですが 、書いている時、自分のセクシャリティやジェンダーについて疑問を抱える人達がいるということを聞きました 。実際に取材もしました。 知り合いから、男性として暮らしているが戸籍上女性という人を紹介してもらいました。彼と話しながら、このプロットを単なるコメディでやるべきでないことを理解しました。彼は、子供の頃から、自分のジェンダーに疑問を持ち続けてきたことを話してくれました。誰だって自分のアイデンティティと折り合いをつけなければならない。その苦しみや、自分たちが生きる世界での居場所についても、考えるきっかけになりました。

 

アニメのそのシーンは、単に同性愛についてというわけではなく、世界の中で自分の居場所を見つけること、それら全てについての話です。ジェンダー・アイデンティティは、その一部でもあります。自分という人間が存在する目的を見つけるということは、 社会に参加する誰もが何らかのかたちでしなければならないものと言えます。 自分が書くストーリーにそのことを入れたかった。むしろテーマの一つとして盛り込みたいと思っていました。

 

そういうテーマは、アニメではあまり見ないですよね。先にも言いましたが、 コメディとして描かれたりしますが、すごく無神経なことだと思います。自身のジェンダーに疑問を持つことは、まったくもって妥当なことだと思います。自分の居場所や存在意義に疑問を感じたことのある人なら誰でも、何らかの形で共感できるはずです。

 

これに関して言えば、日本人の考え方には、古臭いところがあります。だから、LGBTQ+Xジェンダー などについての理解が、まだ、うまく広まっていません。「おかま」や「おねえ 」のような日本語がありますが、 それらの人々についての言及の仕方を本当に改めるべきだと思います。 若い人たちには 、それが理解できるはずです。だから私は、このメッセージをアニメに込めたいと思っていました。 日本でも、 LGBTについて、若い人たちの方が、より古い世代の人たちよりも、 好意的な反応があります。

 

それにしても、 第8話のエピソードについて、海外からのリアクションの多さには驚きました。LGBTQ+ についてのメッセージを見て、喜び、共感する人々からのリアクションで溢れました。

 

──監督は、アニメがどのようにイノベートされ、新しいアイデアを試していかなければならない、ということを語ってきました。『星合の空』について最も革新的なことは何でしたか?

 

先にも触れましたが、個人的に思うのは、ことさら非現実的でファンタジー的なやり方で世界を描くアニメがたくさんある、ということです。現実逃避というのでしょうか、 いまの多くのアニメは、だいたいが夢の世界を提示し、 視聴者にそこで遊んで現実逃避してもらう、 ということが前提となっています。そういうものが商業的にうまくいく、と、 私も言われたりします。

 

昨今、日本で生きることは、 大人であっても子供であっても、より辛いものとなっています。 皆、大変な思いをしています。 大人たちは、自分たちは家に帰って現実逃避できるアニメを楽しみたいんだよ、そういうのが求められているんだ、と考えていますが、 私の考えでは、もう、そういう時代ではありません。ジャンルが多様になり、表現の幅も広がってきています。優れた技術をもったアニメーターがいますし、 演技のできる声優さんもたくさんいます。表現力が増えているのになぜ、夢物語ばかり作らなければならないのでしょう?アニメもまた、 現実について伝え、その問題を描き、視聴者と共に考える作品があっても良いはずだと思います。『 星合の空』は、テレビアニメを通して、それが伝えられると感じた初めての作品です。こういうアニメならではの魅力もあると思います。

 

日本の漫画は、本当に多様です。 面白い、楽しいだけでなく、社会問題を捉えた作品もあります 。どんなトピックでも、それを主題にした漫画があります。それが漫画の強みだと思います。 日本にテレビアニメが現れて50年たちました。しかし、まだ多様性と呼べるレベルに達していないと思います。多様化しなければ、日本のアニメは滅んでいくでしょう。 適応できない生き物は、 単純に生き残れませんよね?大衆メディアだって同じです。そういう多様性を作り、この業界がほんの少しでも適応力が発揮できるようにしたいと思っていました。

 

大人たちからは、こんなものは売れないよ、 と言われ続けてきました。でも、今は 売れなくても、5年後、10年後のアニメーションの為にはなるんじゃないか。 消費者、特に若い消費者は、それを理解してくれるかもしれません。 そういうわけで、商業的には、ちょっとした実験かもしれませんが、トライしたいと思っていました。

 


 

本インタビューのPart 2で、このあとまたお会いしましょう。Part 2では、テレビ放送を終えた『星合の空』の今後や、アニメ業界の現情などについても語られています。

 

記事執筆者:Kim Morrissy

翻訳:上平 満

掲載元:Anime News Network

 

注)本内容は、赤根監督へのインタビューを元に編集して記事化した英文を、日本語に翻訳しなおしたものになります。